デザインはいつだってすぐ死ぬ。
デザイナーの離職率は高い。高いと言っても転職の可能性もあるので統計を取るのは難しい。
僕の実感として高いだろうと思う。
数十年デザイン業界で仕事をしているが、僕の前から大勢の人が去って行った。
特にデザイン制作会社のデザイナーは過酷だ。教育体制がある会社ならまだしも、
未だに劣悪な労働環境にあるところも少なくない。
最悪なのはそういった企業の中にいるとそれが通常になってしまっている。
「俺たちの頃はもっと忙しかった」なんて自慢げに語る人も多い。
しかし、もう一方で別の要因がある。
クライアントが発する何気無い意見だ。
それは、なんとなく言ってみたのかも知れない。
意見を言わなくてはいけなくて発したのかも知れない。
上司の意見に乗っかったのかも知れない。
それがデザイナーの帰宅を止める。
デザイナーサイドでこれは仕方のないことだ。と割り切るか、再度注進する。
または社内の人間が一緒に反駁してくれるかがポイントであるが、
経験値の少ない人ほど、避けては通れない。
元来、デザイナーなんて自己顕示欲の強いお人好しが多いので、
何とかしなくてはならない。なんて余計に鼻息荒くなっちゃったりするのだ。
もっとも、意見を発した本人は何の悪気もないし、
困らせてやろうなんても思っていない。
やってみてダメだったら、元戻せば良いのだから。
デザインはその一言で無意味に手が入り、死ぬ。
デザイナーはその一言で無駄な作業に振り回せれ、死ぬ。
何だって簡単に出来るように思っている人が発する言葉によって、
「簡単ですよ」と無理に返さなくてはいけない末端の兵隊達から順に死ぬのだ。
普通の担当者(ほぼおじさん)に無駄に鍛えられた猛者が生き残る。
そんな構図がまだまだ残っているように思う。